「命の値段」、非正規労働者は低い?裁判官論文が波紋1|2|3
死亡による逸失利益算定式は以下のようになっています。
基礎収入×(1−生活控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
このうちの基礎収入の部分について、東京・大阪・名古屋の3地裁の共同提言では、おおむね30歳未満の人で事故前の収入が全年齢平均賃金より低い場合には、全年齢平均賃金を用いることとしました。以降、これが実務のスタンダードです。
交通事故の逸失利益算定方式についての共提言(判例タイムズ1014号/判例時報1692号)
基礎収入の認定の運用指針
Ⅰ.交通事故による逸失利益の算定において、①原則として、(ア)幼児、生徒、学生の場合、(イ)専業主婦の場合、及び、(ウ)比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については、基礎収入を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金(賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴別・男子又は女子の労働者の全年齢平均賃金)によることとし、②それ以外の者の場合については、事故前の実収入額によることとする。
Ⅱ.上記の1(ウ)の場合において全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金を採用する際には、その判断要素として、以下の諸点を考慮する。
- 事故前の実収入額が全年齢平均よりも低額であること。
- 比較的若年であることを原則とし、おおむね30歳未満であること。
- 現在の職業、事故前の職歴と稼動状況、実収入額と年齢別平均賃金(賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計・男子又は女子の労働者の年齢別賃金)又は学歴別かつ年齢別平均賃金との乖離の程度及びその乖離の原因などを総合的に考慮して、将来的に生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金程度の収入を得られる蓋然性が認められること。
正社員として雇用されたいという意志があるのに、正社員の枠が限られている状況で、契約社員・派遣社員やパート・アルバイトとして働かざるを得ないという方も多いでしょう。
もともと、上記共同提言のなかでも、事情によっては全年齢平均賃金や学歴別平均賃金を用いない可能性を示唆しています(下線部分)から、あえて、非正規労働者に的を絞って基礎収入を低く見積もるような運用はどうかと思います。
一応、記事では
(1)実収入が相当低い(2)正社員として働く意思がない(3)専門技術もない――などの場合、若い層でも逸失利益を低く見積もるべきだとした。としています。
正社員として働く意志がない、という場合には、基礎収入低い額で計算するのもやむを得ないとは思いますが、それ以外の2点は慎重に扱って欲しいと思います。
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