ページ

2010/09/13

社会保険給付の損益相殺と遅延損害金への充当

平成22年09月13日 最高裁判所第一小法廷 判決
平成20(受)494 損害賠償請求事件

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=80672&hanreiKbn=01


交通事故で労災給付などを受けたときに、損害額からどのようにして控除するかという問題が起きます。

また、交通事故などの不法行為による損害賠償債務は不法行為の時から遅滞に陥る(遅延損害金が発生)ものとされていますが、その給付をまず遅延損害金に充てるのか、それとも先に目的の損害項目に充てるのかという問題もあります。



以下、最高裁判決の抜粋です。

1 不法行為により傷害を受け,後遺障害が残った場合において,社会保険給付がされたときに,上記の社会保険給付との損益相殺的な調整の対象となる損害

被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労災保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付を受けたときは,これらの社会保険給付は,それぞれの制度の趣旨目的に従い,特定の損害について必要額をてん補するために支給されるものであるから,同給付については,てん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当である。



2 不法行為により傷害を受け,後遺障害が残った場合において,不法行為時から相当な時間経過後に現実化する損害をてん補するために社会保険給付がされたときに,損益相殺的な調整に当たって,損害がてん補されたと評価すべき時期


不法行為による損害賠償債務は,不法行為の時に発生し,かつ,何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解されるが(最高裁昭和34年(オ)第117号同37年9月4日第三小法廷判決・民集16巻9号1834頁参照),被害者が不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合においては,不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害につき,不確実,不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に,不法行為の時におけるその額を算定せざるを得ない。その額の算定に当たっては,一般に,不法行為の時から損害が現実化する時までの間の中間利息が必ずしも厳密に控除されるわけではないこと,上記の場合に支給される労災保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付は,それぞれの制度の趣旨目的に従い,特定の損害について必要額をてん補するために,てん補の対象となる損害が現実化する都度ないし現実化するのに対応して定期的に支給されることが予定されていることなどを考慮すると,制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り,これらが支給され,又は支給されることが確定することにより,そのてん補の対象となる損害は不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが,公平の見地からみて相当というべきである。

0 件のコメント: